【短編】きみの甘くない魔法
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「幸せになってください!」
「ありがとう」
帰り道。そんな声が聞こえてふと足を止める。
下駄箱のところで、へたくそな作り笑いをする、今にも泣きそうなコウと。
それから、一度だけ見たことのある、大人っぽいあの先輩。そしてその隣にいる男の先輩。
なんだかそれだけですべてを分かってしまった気がして、足が動かなくなる。
先輩たちは肩を並べて帰っていって、その後ろ姿を見つめるコウと私だけがその場に残って。
「あー、かっこ悪いの見られちゃったな」
眉を下げて、決まり悪そうに笑う彼の手には、甘くないガトーショコラ。
……ばか。