【短編】きみの甘くない魔法
「いや、分かってたんだ、好きな人がいるのは。
きっとすぐ上手くいくんだろうなってことも、知ってた。
だけど俺、どうしても、あの笑顔が見たかったんだよな」
切ない顔してわらうきみの横顔は、こっちを向かなくて。
苦しさに揺れるきみの瞳は、わたしのことを捉えてくれなくて。
ああ、そうか。
わたしも、きみの幸せそうに笑う顔が見たかったんだ。
ほんとうはきみの、甘くないお菓子が大嫌いだった。
ほんとうはきみの、へたくそな笑顔が大嫌いだった。
だけどほんとうはきみに、甘い魔法をかけてほしかった。
私のための甘いお菓子を、つくってほしかったんだー…。