優しい愛に包まれて~イケメンとの同居生活はドキドキの連続です~
兄は今でも時々、仕事に行き詰まると、気晴らしにピアノを弾いているらしいけど…

私には、その才能は全く無かったみたい。

そんな私達が弾いていたピアノが、まだ別荘にあったから、祥太君、本当に喜んでくれたの。

防音設備がバッチリな部屋に置いてあるピアノ。

祥太君は、しっかり調律して、昼夜問わずに練習をしているみたい。

たまにしか弾いてもらえずに、可哀想だったピアノを、祥太君に使ってもらえて嬉しい。

力強さを強調させる兄とは、また違うタッチで、祥太君のピアノは、迫力の中にも繊細な優しさを感じさせる。

絶妙な音を出して、周りを魅了するの。

時間を忘れそうになる程、聴き惚れてしまうんだ。

練習を見させてもらう時は、祥太君のピアノを独り占め出来る幸せな時間だった。

『ねえ、結菜ちゃん…』

『ん?どうしたの?』

『いや…何でもないよ。行ってきます。朝ご飯美味しかった、ありがとう』

祥太君?

ちょっと真剣な表情だったけど…

何か言いたかったのかな…

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