夏に消えた彼女
「ねぇ。もし、自分の命があと少ししかなかったらキミならどうする?」
海でいつもみたいに偶然に会って、白いワンピースに麦わら帽子を被った彼女は僕にそう問う。
命があと少ししかないなんて考えたことがない。
だから、返答に困った。
困った僕は逆に問いかけた。
キミならどうするの、と。
すると、彼女は穿いていたサンダルを脱いで、海へと駆けていく。
波が彼女の足に弾かれて、キラキラと太陽に反射する。
「私は笑っていたい。命が終わる最後の瞬間まで私は笑っていたい」
青空と海を背景に、白いワンピースと麦わら帽子姿で笑う彼女はまるで絵画のように綺麗だった。
咲いた笑顔の花もいつもと変わらない。