流転王女と放浪皇子 聖女エミリアの物語
第二章 二人の旅路
◇ 流転の始まり ◇
翌日、友好使節団長のシューラー卿はカーザール帝国に向けて帰国の途についた。
騎兵隊や荷馬車が連なり、帝国旗とシューラー卿自身の紋章旗を掲げた儀典官が四頭立ての四輪馬車の前後を固めている。
街の人々は威厳に満ちた大行列に圧倒されていた。
「さすが大帝国の使節団は違うな」
「ああ、うちの王様は出かけるときもあんなにお供はつれていなかったもんな」
「まあ、格の違いってやつだ」
摂政のマウリス伯によって国王アルフォンテ二世の葬儀が行われた。
城館内の教会で司祭と数名の行政官だけが参列した質素なものだった。
王女は幽閉されたままで、アルフォンテ十二騎諸侯の参列も許されなかった。
抗議したナヴェル伯父に対して、マウリス伯が告げた。
「我が王国はカーザール帝国の庇護の下にある。不名誉な死を喧伝するような葬儀は王家の尊厳に関わるとのシューラー卿のご指示である。閣下の御指示は帝国の御意思。このマウリス、摂政として忠実に遂行するまででございますな」
「しかしエミリア王女様までお父上の葬儀に参列を許されないとは」
「問答無用。たとえナヴェル殿といえども、これ以上の抗議は反逆の意思と見なしますぞ」
他の貴族達に止められてナヴェル伯父は引き下がった。