この結婚の行方は・・

そのお医者様は、
祐而さんの名前だけの妻だと
名乗った。

びっくりしたが
彼女の人柄なのか
すんなり受け入れられた。

その女医さんは、
「穂乃華です。」
と、名前を教えてくれて
「あいつ、嫌、
安田さんが、心配しているでしょ?」
と、言った。
「えっ、安田さん?
祐而さんの事ですか?
旦那様を安田さんと
呼ばれているのですか?」
と、こちらがびっくりする。
すると
「うん?
だって、安田さんだしね。
ごめんなさいね、正直嫌いなのよ
あの人。」
「うふふっ、先生、面白い方ですね。
それと、しばらく祐而さんとは
お会いしていないので、わかりません。」
と、答えると
「えっ、なぜ?」
と、言われたから
「なぜと、言われても
私にもはっきりとした理由が
あるわけではないのですが。
祐而さんが、それを望んでいる
ように感じました。」
「そんなこと、きっとないわよ。
彼は、あなたの為に・・・・」
「そうなんです。
祐而さんは、いつも優しかった。
ですが、先生との話がでたぐらいから
でしょうか、毎日の電話も日に日に減り
かかってきても、荒れて
心ここにあらずの感じで
やはり私に対し愛情はないんだと
わかりました。」
「そんなっ、まったく、
なんなの、あの男は。
だから、はじめから
あいつも、安東も大嫌いなのよ。」
と、言う穂乃華さんが可笑しくて
「クスクスっ。」
と、笑っていると
「ああっと、ごめんなさい。」
と、言われて
私は、首を横にふった。

それから、私に
「季織さんの身体の検査させて
ほしいの。
こちらの先生からも
情報は頂いていますが。」
と、言われた。

検査は、もう・・たくさんだと
ずっと思っていた。

もう、思い残す事もないし・・
だけど・・・
なぜか・・・
「今後の医学のお役にたつなら。」
「違う、季織さんのためよ。」
と、穂乃華さんは言った。

そんな穂乃華さんの言葉が
嬉しかった。

体調も落ち着いた私は
穂乃華さんのいる相澤総合病院に
転院することにした。

父も母も、穂乃華さんに
「宜しくお願いします。」
と、言い
穂乃華さんは、
「お任せ頂きまして
ありがとうございます。」
と、答えていた。

私には乳母だけが一緒についていった。

私は一つだけ
やはり、祐而さんには、
何も知らせないでほしいとお願いした。

穂乃華さんは、
少し考えてから
「わかりました。」
と、言ってくれた。
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