BadをHappyに!?〜おとぎ話の世界に閉じ込められちゃった〜
服装から見て、お姫様であることは間違いなさそうだ。

肌はまるで雪のように白く、頰は血のように赤く、髪は黒檀のように黒い。

「私たちの姿、見えてるの?」

ドロシーが訊ねると、女の子は頷く。

シャーロットは童話集の目次を見て、ドロシーの腕を掴む。

「クラールハイト!」

その刹那、二人は白い光に包まれ、眩しさから目を閉じていた女の子は「あれ?お姉さんたちは?」と辺りを見渡し始めた。

シャーロットは透明になる魔法をかけたのだ。これで、二人の姿や声は誰にも見えないし聞こえない。

「シャーロット、ナイス!」

笑顔を向けるドロシーに、シャーロットは「これ見て!」と目次を指差した。

二人は、童話集の最初のページにいるようだ。一番最初のお話はーーー白雪姫。

「わあ!ロマンチックなお話じゃない!王子様のキスで白雪姫は眼を覚ますんでしょ?」

シャーロットは首を横に振って、グリム童話の白雪姫の物語を話した。

白雪姫を殺そうとするのは、継母ではなく実の母親。白雪姫だけでなく、グリム童話の初版は残酷な母親が数多く登場する。なぜなら、その当時ヨーロッパでは貧しさから実の子を殺す事件が行われていたから。

母親は美しい白雪姫を殺すよう猟師に命じ、殺した証として肺と肝を持ってくるように言いつける。猟師は白雪姫を逃し、イノシシの肺と肝を持って帰った。それをお妃は塩ゆでにして食べた。なぜなら、十九世紀のドイツには、その人の肉を食べれば美貌を手に入れることができるという言い伝えがあったから。
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