王女にツバメ
実際、どこにも飛んではいかないのだけれど。
満員電車より少し空いている。あたしは扉の横に肩をつけて寄り掛かっていた。
彼は……もう会わないだろうと思っていた彼は、そのすぐ横でつり革を掴んでいる。
ラフな格好をしている。
「仕事終わり?」
「あ……はい」
「うわー距離を感じる。寂しいなー、俺ずっと連絡待ってたのに」
なんか明るいところで見ると更に軽そう。というか、チャラい?
電車が停まる。返事をせずに降りると、隣に並んでいた。
ぎょっとそちらを見上げてしまう。
彼はそれに気づかず、「そうそうこっちだった」と一人納得している。