王女にツバメ
零れたミルク
男の名前は琉生というらしい。
近くのIT企業で働いているらしい。
大学出て働いてるなら、24、5ってとこかな。
「裏葉さーん、醤油がない」
うちに入り浸っている。いや、通ってきてる。
お風呂を出るとキッチンで何かを作ってくれていて、こちらを振り向く。
醤油を最後にいつ買ったのかすら思い出せなくて、上の方の戸棚に手を伸ばす。
「危ないからいいよ」
「たぶんここら辺にあるはず」
後ろから琉生が同じように手を伸ばしてくる。ぱし、と何故かあたしの手を掴んだ。
それは醬油じゃないんだけど。