王女にツバメ
「チョコレート、もらえた?」
そう、バレンタインだし。何の脈絡もない問に、琉生は複雑そうな顔をする。
「貰ってない」
「嘘」
「本当だって」
「社会人だって嘘吐いたでしょう」
外は曇っていた。雪が降りそうな気配もする。
固まる琉生が可哀想で、部屋に招いた。
換気していたリビングは寒く、部屋の温度を上げた。お湯を沸かそうかとキッチンへ行こうとすると、腕を引かれた。
「……ごめんなさい」
心配になるほど青ざめていて、あたしは寧ろ笑ってしまった。
あーなんか、大丈夫そうだ。笑えたし、良かった。