王女にツバメ

全く、記憶にございません。
寝ぼけていたのか、それとも琉生が嘘をでっち上げているのか。

……いや、そんなことする必要性がないか。

「最初に社会人だって言ってから、身分明かすタイミング見失って……それに裏葉さんのタイプ、俳優見てると諸歳上だったから」
「それは、言われたら多分、追い返してただろうけど」
「でも好きだから、絶対別れたくない」

じわりと何かが滲む。

血か、涙か。

あたしも好きだと言えたら。

寂しさを埋めるだけじゃない存在に変わったと言えたら。

ブルーデージーの花言葉は幸福。

でも、ツバメは渡り鳥で。

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