無気力オオカミくんは、私だけに夢中。
ただでさえ整いすぎた顔が隣にあって落ち着かないのに、名前なんか呼ばれたら、授業どころじゃなくなっちゃう。
「下の名前ダメなの? なんで?」
「なんでって……その、いきなりすぎるでしょ?」
「俺のことも“ハルカ”って呼んでいーから」
「いや、そういう問題じゃ……」
まるで話を聞かない西野くんは、透き通った瞳でじっと私を見つめる。
「“利奈ちゃん”」
「……っ、だから、恥ずかしいって……高校生にもなってちゃん付けとか」
「じゃあ、利奈」
「んえ……?」
呼び捨て。
さっきから開いた口がふさがらない。
ペースに呑まれっぱなしで悔しい。
でもイケメンに、しかもいい声で呼び捨てられて、悪い気はしないかも……。
なんて思ってたら、いきなり、ほっぺたをぐいーっと引っ張られた。
……痛い!
「ちょ、なに…っ?」
「いや……あまりにもまぬけな顔してたから、つい」
「ま、まぬけ……」