無気力オオカミくんは、私だけに夢中。
西野の指が唇に添えられる。
……え、なに?
頭がふわふわ、くらくら。
リップを落としたってわかるってことは、今朝、私がつけてたのにも気づいてたってこと?
「先輩より、ぜんぜん可愛くない」
そんな声が聞こえた矢先、
私は甘いにおいとあったかい体温に包まれた。
西野の腕の中。
頭がこんがらがる。
可愛くないって言いながら、西野は私を抱きしめてる。
そんなことありえないと思って、もしかしたら首を締められてるんじゃないかと疑ったけど、やっぱり抱きしめられてた。
「……でも、なんか、時々すごい欲しくなるんですよね」
西野の腕に力がこもった。
「あたしに出て行けって?」
「今日はこの子の気分、ってだけです。また今度、気が向いたら声かけてください」
先輩のため息が聞こえた。
それから足音。
どんどん遠ざかっていくのを、熱い体温のなかでぼんやりと聞いた──────。