無気力オオカミくんは、私だけに夢中。
女子トイレと男子トイレはとなり同士。
近いから、ときどきお互いの声も聞こえてしまう。
鈴ちゃんが中にはいったあと、私はなんとなく鏡を見た。
今日のために少し張り切って巻いてきた髪、崩れてないかなって。
そしたら、となりの壁越しから、複数人の笑い声が聞こえてきて。
笑い声だけなのに、それも複数いるのに、西野の声が混ざってることに気づいた。
思わず聞き耳を立ててしまう。
すると、なんということか。
「お前、最近菊本さんがお気に入りなん?」
まさかの自分の名前が聞こえてきて、体がドッと熱くなって固まった。
私の話!?
聞きたいような、聞きたくないような。
「そういや西野、菊本さんの話すること多いよな」
「けど、菊本さんてアイツと付き合ってんじゃねえの?……えーと、サッカー部の陸人」
付き合ってないです!
そんなことより、西野は?
肝心の西野の声が聞こえない。
西野は、なんて答えるの……。
「利奈って、黒髪が好きらしーよ。
……お似合いだよね、陸人くんと」