無気力オオカミくんは、私だけに夢中。


「なんか……ごめんなさい。こんな芋女が隣に座ってしまって……」

「イモ女?誰のこと?」



とぼけてくれるなんて、蒼くん優しいね。
でも……。



「たしかにリナちゃん派手ではないけど。オレは、そういう感じのほうが好きだよ。すごい可愛いと思う」



気を使わせて、お世辞まで言わせて、ちょっと耐えきれない気持ちになった。



「ちょっと、トイレ行ってくるね!」



ポーチを持って部屋を出る。

なにか少しでもイメージアップできる道具が入ってればいいのに、中身はクシと薬用リップと、目薬と──────。



あっ。


掴みあげたリップスティック。


西野が、買ってくれたもの……。



あれから一度もつけてないけど、毎日ポーチの中に入れて持ち歩いてた。


これつけたら、ちょっとはマシになるかな……。


キャップをはずして、底をくるくる。出てきたピンクを唇に当てた。


ラメが控えめに光ってていい感じ。唇だけは。

芋女に変わりはないけど、これ以上どうしようもないし、しょうがない。



< 119 / 332 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop