無気力オオカミくんは、私だけに夢中。
「なんか……ごめんなさい。こんな芋女が隣に座ってしまって……」
「イモ女?誰のこと?」
とぼけてくれるなんて、蒼くん優しいね。
でも……。
「たしかにリナちゃん派手ではないけど。オレは、そういう感じのほうが好きだよ。すごい可愛いと思う」
気を使わせて、お世辞まで言わせて、ちょっと耐えきれない気持ちになった。
「ちょっと、トイレ行ってくるね!」
ポーチを持って部屋を出る。
なにか少しでもイメージアップできる道具が入ってればいいのに、中身はクシと薬用リップと、目薬と──────。
あっ。
掴みあげたリップスティック。
西野が、買ってくれたもの……。
あれから一度もつけてないけど、毎日ポーチの中に入れて持ち歩いてた。
これつけたら、ちょっとはマシになるかな……。
キャップをはずして、底をくるくる。出てきたピンクを唇に当てた。
ラメが控えめに光ってていい感じ。唇だけは。
芋女に変わりはないけど、これ以上どうしようもないし、しょうがない。