無気力オオカミくんは、私だけに夢中。
体が傾く感覚。
蒼くんのほうに倒れた
──────はずなのに、
ふいに、反対方向から力が加わって……。
「……利奈」
ふわっと、大好きな甘いにおいに包まれた。
「先輩、利奈になに飲ませたんですか」
すぐ近くから、西野の声がする。
幻聴……?
「へー。遥日が珍しく怖い顔してる」
「持ち帰る気でいました? あぶないことする人には、ちょっと渡したくないんですけど」
「……ちょっとどころじゃなさそうだね。惚れちゃってんの?」
「……まさか。ただ、この子クラスメイトなんで、俺が先輩みたいなのと繋がってるのが知れたら、のちのち厄介だなーって」
「そんな店に出入りしてんのは誰だよ?まあいーや。お前は、何人も女侍らせてんのがお似合いだわ」
「ですね」
ふわっと体が浮く感覚がした。
「俺、帰ります。……あ、利奈のぶんのお金もいっしょに置いといたんで」
意識は深いところに沈んでいって、周りの声はもう聞こえなかった。