無気力オオカミくんは、私だけに夢中。
腕は疲れてんのに、もう少しこのままでもいいなとか一瞬でも考えた俺、どうかしてるな。
腕もげるっつーの。
5.6分。
利奈抱えてるから、7.8分? かかったかな。
思ったよりあっという間だった。
駅に入って改札が見えたところで、陸人くん発見。
俺たちに気づくと、あいまいに笑いながら駆け寄ってくる。
「利奈、駅ついた。下ろすよ」
「やだ」
「聞き分け悪い子はキライだなー」
「う……おります」
ここまで素直になるとか、普段の利奈じゃありえない。
動画の一つや二つ、撮っとけばよかった。
そしたら、脅して俺の言いなりにできたのに。
ゆっくりと足をつかせて、利奈が立ちあがるのを支えた。
「利奈、帰んぞ」
俺が手を離した瞬間、陸人くんがその肩を抱く。
「ん……?なんか今度は陸人が出てきた……」
目をこする利奈を陸人くんがぽかんと見つめるから
「この子、さっきからずっと夢見てるって勘違いしてるんだよ」
と、そっと耳打ちして。
それから少しかがんで、利奈に目線を合わせた。