無気力オオカミくんは、私だけに夢中。
「涙目」
ふ、と笑う瞳が優しい。
息ができるようになったのに、肺が収縮したんじゃないかってくらい、うまく吸うことができなくて。
「酸素足りないよ……」
頭がくらくらするから、西野の袖をきゅっとつかんだ。
「利奈、この手……」
「え……なに……?」
「いや。……ていうか、思い出した?」
「う、えっと、わかんない」
そもそも何を忘れてるのかわかんないと、思い出せないよ?
「思い出せないなら、思い出すまでするけど」
「っ、でも。……西野、バイトは」
「へーき。しばらく出てこないって言ってある」
うぅ、なにそれ。
そんなのありなの?
サボりはいけないのに……。
「呼吸戻った?」
「へ……あ、まだ、」
「今度は止めんなよ」
「───、んっ」
意地悪なオオカミは
待てを聞かない。