無気力オオカミくんは、私だけに夢中。


「お。ちょっとは警戒心学んだ?」

「……西野オオカミだから」

「利奈のこと襲った覚えないけど」

「おっ、襲うとかじゃなくてっ。いつも、スキあらば噛み付くみたいにキス、してくるし」

「ふーん。……襲ってあげよーか?」

「えっ」



ドキッとして思わず見上げる。

さりげなく手を取られて、
一瞬、西野の口に牙が見えた気がした。


からかいの言葉だってわかるけど、瞬時に言葉が出てこない。

私、動揺しすぎ。




「っえ、と……あの……」

「冗談」

「あいたっ」



手刀がトン、と頭に落ちてきた。



「利奈相手に、そんな気起こらないから」



あ、……そうだよね。


手を出されなくてよかったと。ここは喜ぶべきなんだろうけど。


私相手に、そんな気起こらない、か……。

それって、そういう対象として見られてないってことだよね。

いや、初めからわかってるけどね。



可愛くないから?
体が貧相だから?


心の中にモヤモヤが立ちこめる。


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