無気力オオカミくんは、私だけに夢中。



「…………はあ?」


と、西野の声。


「……え?」


と、私。




西野、しばらく棒立ちしたあと、ガクンと力が抜けたみたいにその場に座り込んだ。



「えっ……!?西野、どうしたの?大丈夫……?」

「大丈夫じゃないのは利奈ちゃんの頭」

「へっ?」

「はあ。ほんっと気が抜ける。相手にしてらんな」




しゃがんだままの西野をおろおろと見つめる。



「利奈って少女漫画読んでんじゃないの?」

「え。読んでるけど」

「だったらフツー分かるでしょ。それともわざと?」

「え……もしかして、首絞めじゃなくて、そっち?」

「……一応聞くけど、そっちって?」

「うっ……あの、アレ……。手首縛って、いっ、いけないことする、やつ」




噛み噛みながらもどうにか答えると、西野がふっと笑うから心臓がドンッと跳ねた。



「へー?わかってんじゃん。あとは目隠しもアリだね」



妖しい顔を見せられて、ちょっと見惚れた。

うっかりしてた。

だから気づくのが遅れた。



立ち上がる瞬間、

西野の唇が私のほっぺたをかすめたことに。


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