無気力オオカミくんは、私だけに夢中。
「え?あ、ごめん。なんの話だっけ」
「だから、西野にはくれぐれも気をつけろよって。好きになったりしたら泣かされるぞ」
「……ああ、なんだ西野くんね。わかってるよ。それより、陸人って──────」
彼女いるの?
そう聞きかけたのを遮って、ごつんとゲンコツが落ちてきた。
「痛っ。……いきなりなに?」
ほんとはそこまで痛くなかったけど、今ゲンコツする意味がわからないから軽く睨んでみる。
「人の話はマジメに聞け。俺は本気で心配してんの。西野に泣かされた女子、何人いると思う?」
「え? うーん……たくさん?」
「お前が思ってるより、ずっと性格悪いからな。あいつ、平気で女捨てるから」
「うん。何回も言わなくてもわかってるって……」
今回のことでよーくわかった。
初めて話す私のことを、いきなり下の名前で呼び捨ててくるし、制服のリボンを平気で解こうとしてくるし。
数学の補修のこととか、すごいバカにした目で見てくるし。
西野くんは、軽くて口悪くて、とにかくダメ。