無気力オオカミくんは、私だけに夢中。
おろおろしてる私に、鈴ちゃんは顔を寄せて耳打ちしてきた。
「聞こえてきた話によると、昨日部活が終わったあと、陸人くんと利奈が裏庭でキスしてた……って」
「……ええっ!?」
陸人とキス!?
「してないよ、そんなの!」
「そうだよね~。そんなことしてたら、利奈、絶対ウチに連絡するもんね?」
「うん、うん。キスなんかしてないよ」
「でももう広まっちゃってるから、うーん、どうしたものかねぇ」
隠れるように裏庭で待ち合わせしたのが裏目に出たのかな?
キスなんてしてないのに……。
暗かったから、影が重なったときにそう見えちゃったとか?
誤解です、誤解です。
「どうしよう~。嫉妬買いたくないよ。どうやったら誤解解けるかな!?」
「こういうときって、否定したら余計怪しまれるしね」
「……」
「いっそのこと、事実にしちゃうとか」
「えっ?」
「陸人くんとほんとに付き合っちゃうとか~」
それは無理だよ。
だって陸人、好きな人いるし。たぶんだけど。
噂、早く収束しますように。
肩をガックリ落として教室に向かうしかなかった。