無気力オオカミくんは、私だけに夢中。


そのまま教室に戻るのかと思ったら、西野は自販機のほうに歩き出した。


ボタンを押して、ガコン。


缶を取り出した西野の手が、こっちに伸びてきて……ほっぺたにピタリ。



「ひぇっ冷たっ」

「あげる」

「え!」


西野がパッと手を離すから、受け取らざるをえない。



「俺もオレンジにしよーかな」


ピッという音と共に、私が受け取ったものと同じデザインの缶が出てきた。


お……お揃いだ。


歩きだした西野を慌てて追いかける。



「あの、私、お金バッグの中にあって。教室で返すねっ?」

「いらない。あげるって言ったでしょ」


ほんとにいらないって顔してる。
ここで食い下がれば、めんどくさいって一蹴されるに違いない。


「う……。ありがとう、西野」


冷たかった缶は、手の熱であっという間にぬるくなってしまった。

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