無気力オオカミくんは、私だけに夢中。
そんな先生の声は聞こえないフリ。
机に戻ってペンケースを掴み、廊下をダッシュする。
どうしよう!
設けられた枠はそんなに大きくないから、ものすごく時間がかかるってわけじゃないけど、まだ何を書くか決めてないし、手書きじゃないとだめだし、清書もしなきゃいけないし。
西野、待っててくれるかな……。
放課後まで談話室いるって言ってたけど、それっていったい、いつまでなのか。
無我夢中で走ってたら、角を曲がってきた男子集団の1人と肩がぶつかってしまった。
「わっ、すみません、ごめんなさいぃ」
振り向き際に謝ると、相手は「あっ」と声をあげた。
「利奈チャンじゃん」
「え?……あ」
誰かと思って顔を上げたら、話したことない人が立ってて。でも、その隣には陸人がいて、サッカー部の仲間なんだってわかった。
「廊下走ったら危ないだろ。何をそんなに急いでんだよ」
陸人が私の前に立つ。
それと同時に、廊下にいた人たちからの視線を一気に感じた。