無気力オオカミくんは、私だけに夢中。
見せられた写真が頭から離れない。
ただ2人で廊下に立って話してるだけの写真。
距離が近くて、誰も入り込めなさそうな。
裏庭でキスしてたって、利奈は必死で否定してたけど。
ただ、噂が広まるのが嫌だったってだけか。
「っ、はるかぁ……」
こもった声で名前を呼ばれる。
「遥日は、誰とも……付き合わないよね……?」
テキトーに頷いた。
「てか、集中しろって言っただろ」
「……今日も、最後まではしてくれないの?」
聞こえないふりをして、代わりに唇を塞ぐ。
続けていると、だんだんと熱が回り始めて、余計なことを考えなくて済むようになる。
──────だから
気づかなかった。
談話室のドアが開いたことに。
「に、西野……」
震えた声が聞こえて、ハッと顔をあげる。
「──────利奈、」
名前を読んだ瞬間、
利奈の目からぽろりと涙がこぼれ落ちて。
心臓が冷たく音を立てた。
「待ってる…って、言ったくせに……」
利奈のスカートが翻る。
景色がやけにスローモーションで、ざらついて見えた。