無気力オオカミくんは、私だけに夢中。
いったいどこに連れていかれるのかと思っていたら、西野くんはクラス棟の隅にある談話室の前で足を止めた。
「ここも俺のお気に入り。いい感じのソファがあんだよね」
ドアがスライドして中が見えた。
分厚めのカーテンが閉まってて薄暗い。
「昼休みとか放課後は、進路指導やらなんやらで空いてなくてさあ。だから、朝が狙い目」
そう言ってやんわりと笑うから、胸の奥がきゅっとせまくなった。
これは不意打ち。
西野くんっていつも無表情なイメージだったけど、案外よく笑う……。
──────カチャ、と鍵が回る音でハッと我に返る。
いけないいけない。
気を抜いたら、すぐ見惚れちゃう。
えっ。ていうか、
「鍵閉めるの?」
「当たり前でしょ。邪魔されたくないし……」
「う……ん、そうだよね」
勘違いしちゃだめ。
西野くんが邪魔されたくないのは、私との時間じゃなくて、睡眠……。