無気力オオカミくんは、私だけに夢中。


今、さらりとなんて言った……?

カ……“カワイイ”



うん。わかってる。

相手は西野くんだし、誰にでも言ってるし、あいさつみたいな言葉。

おはようとイコール。同義語。

深い意味はないし。ただのお世辞だし。
ふつうに、からかっただけだよね……。




「利奈の太もも、気持ちーね。
今までで1番好きかも……」



ほら……ほらね?

“1番”なんて、“その前”がないと絶対に出てこない言葉だもん。



「それは、光栄です……」


いたって冷静なふり。
これも、いつまでもつかわからない。


「ほんと、俺好み」


目を細められて、くらっときちゃう。


早く目を閉じてほしい、眠らないでほしい。

喋らないでほしい、構ってほしい。

支離滅裂、ぐっちゃぐちゃ。



「利奈」

「……なに?」

「なんとなく。呼んだだけ」


なにそれ。


「利奈って、ほんとに男知らないんだね」


西野くんの指先が伸びてきて、私の横髪をくるっともてあそぶ。


「なんか、悪いこと教えたくなる」

< 30 / 332 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop