無気力オオカミくんは、私だけに夢中。
今、さらりとなんて言った……?
カ……“カワイイ”
うん。わかってる。
相手は西野くんだし、誰にでも言ってるし、あいさつみたいな言葉。
おはようとイコール。同義語。
深い意味はないし。ただのお世辞だし。
ふつうに、からかっただけだよね……。
「利奈の太もも、気持ちーね。
今までで1番好きかも……」
ほら……ほらね?
“1番”なんて、“その前”がないと絶対に出てこない言葉だもん。
「それは、光栄です……」
いたって冷静なふり。
これも、いつまでもつかわからない。
「ほんと、俺好み」
目を細められて、くらっときちゃう。
早く目を閉じてほしい、眠らないでほしい。
喋らないでほしい、構ってほしい。
支離滅裂、ぐっちゃぐちゃ。
「利奈」
「……なに?」
「なんとなく。呼んだだけ」
なにそれ。
「利奈って、ほんとに男知らないんだね」
西野くんの指先が伸びてきて、私の横髪をくるっともてあそぶ。
「なんか、悪いこと教えたくなる」