無気力オオカミくんは、私だけに夢中。


ドク…と、今度はやけに静かな音がした。
妖しく笑った顔が妙に色っぽい。


髪をほどいた手が首に移動して、ラインをなぞる。

触れられた部分が熱くなって、熱はあっという間に全身に広がった。


だめだ……この人の指、毒針みたい。

おかしい。



「……手出したら、陸人くんに怒られちゃうか」



離れて行く手が、ちょっと寂しいなんて。



「利奈、おやすみ」


もう少し話してたい、なんて。



「下の名前で呼ばないでって言ったのに」

「いーじゃん。二人のときくらい」



その言い方もずるい。



「俺のこと遥日って呼んで」

「……やだ」


ちょっとでも長く会話を続けたくて、反抗してみる。


「呼べよ」

「……西野くん」

「生意気」

「……」

「せめて、“くん” は取って」


ちょっと考えた。

くんを、取る……。



「……西野?」


慣れなくてそわっとした。

西野くんが薄く笑う。



「その呼び方、ちょっと気に入った」


< 31 / 332 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop