無気力オオカミくんは、私だけに夢中。
ドク…と、今度はやけに静かな音がした。
妖しく笑った顔が妙に色っぽい。
髪をほどいた手が首に移動して、ラインをなぞる。
触れられた部分が熱くなって、熱はあっという間に全身に広がった。
だめだ……この人の指、毒針みたい。
おかしい。
「……手出したら、陸人くんに怒られちゃうか」
離れて行く手が、ちょっと寂しいなんて。
「利奈、おやすみ」
もう少し話してたい、なんて。
「下の名前で呼ばないでって言ったのに」
「いーじゃん。二人のときくらい」
その言い方もずるい。
「俺のこと遥日って呼んで」
「……やだ」
ちょっとでも長く会話を続けたくて、反抗してみる。
「呼べよ」
「……西野くん」
「生意気」
「……」
「せめて、“くん” は取って」
ちょっと考えた。
くんを、取る……。
「……西野?」
慣れなくてそわっとした。
西野くんが薄く笑う。
「その呼び方、ちょっと気に入った」