無気力オオカミくんは、私だけに夢中。



信じたくないけど、それしか考えられない。

事実はどうあれ、このままじゃテストを受けられない。




手を挙げて先生に言う……?

でも、ロッカーを探しに行ったところで予備のシャーペンがあるわけでもないし。

どうしたら……。



不安と動揺が混ざって、泣きそうにる。

きゅっと唇を噛んだ。





「──────利奈」



囁くような小さな声に、びくりと肩があがった。


西野の声。


でも、今はテスト中……。


空耳?


戸惑っていると、再び名前を呼ばれた。

小さな小さな声。



おそるおそる、目線だけ隣に動かすと。



西野の目は、テスト用紙を見ていて。


──────でも、机の下のほう。



だらりと下がった西野の手が、こっちを見ろと言わんばかりに動いた。


その手の中には、黒のシャープペン。

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