無気力オオカミくんは、私だけに夢中。
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電車を降りて、いつものように学校へと向かっていたら
道のちょっと入り込んだところから、なにやら揉めているような声が聞こえてきた。
男女の声。
こういうことにはあんまり関わらないほうがいいってわかるってるけど、どうしても興味が先走ってしまって、つい、ブロック塀に隠れるようにして中を覗きこんだ。
危うく声をあげそうになる。
スーツを着た女の人と、うちの制服を着た男子学生が抱き合っていたから。
……いや、よく見ると、女の人が一方的に、男子学生に抱きついてる。
必死にすがりつくみたいに。
スーツと学生服って、兄弟とかでない限り、怪しい組み合わせ。
いったい何してるんだろうって、もう一歩近づいてみたところ。
「やだぁ、遥日くん捨てないで……っ」
──────絶句。
なんと、相手は西野遥日。
鬱陶しそうに女の人を見下ろしてる。
「あんたが悪いんだよ。俺に、彼氏いないって嘘つくから」
「それは謝るけど…っ。すぐに別れるから!私にはもう遥日くんがいないとだめなの……!」