無気力オオカミくんは、私だけに夢中。

ちょっと気難しい顔をして私の席のほうに向かってくるから、ヒヤッとしてしまう。



「菊本」

「は、はい……」


声をかけられて、背筋を伸ばす。

私、なんか悪いことしたかな?と思ったら。



「西野はどこ行った?」

「へ?……あ、西野くんなら、もう出ていきました」

「そうかー。じゃあ呼んできてくれんか?職員室に来るように伝えてもらえればいいから。俺も忙しいんでね、できれば昼休み中に、なるべく早く頼むよ」

「ええっ……」

「じゃあ任せた」



ぽん、と私の肩を叩いて、そのまま忙しそうに教室を出ていってしまった。

ちょっと、それはいくらなんでも……。


呆気に取られてる私をよそに、鈴ちゃんはニコニコして。



「話せるチャンスじゃ~ん。よかったね!」



いや、西野は今、女の子といるわけで……!

見つけられたとして、今度は、私が邪魔だって言われるパターンじゃない?

ううっ、でも先生に頼まれたからには行かないと……。


鈴ちゃんに、ごめんと謝って席を立った。

< 53 / 332 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop