無気力オオカミくんは、私だけに夢中。
ちょっと気難しい顔をして私の席のほうに向かってくるから、ヒヤッとしてしまう。
「菊本」
「は、はい……」
声をかけられて、背筋を伸ばす。
私、なんか悪いことしたかな?と思ったら。
「西野はどこ行った?」
「へ?……あ、西野くんなら、もう出ていきました」
「そうかー。じゃあ呼んできてくれんか?職員室に来るように伝えてもらえればいいから。俺も忙しいんでね、できれば昼休み中に、なるべく早く頼むよ」
「ええっ……」
「じゃあ任せた」
ぽん、と私の肩を叩いて、そのまま忙しそうに教室を出ていってしまった。
ちょっと、それはいくらなんでも……。
呆気に取られてる私をよそに、鈴ちゃんはニコニコして。
「話せるチャンスじゃ~ん。よかったね!」
いや、西野は今、女の子といるわけで……!
見つけられたとして、今度は、私が邪魔だって言われるパターンじゃない?
ううっ、でも先生に頼まれたからには行かないと……。
鈴ちゃんに、ごめんと謝って席を立った。