無気力オオカミくんは、私だけに夢中。
おもわず「ごめんなさい」と口にしそうになる。
声をあげたらまずい。
幸い、西野にはまだ気づかれてないみたいだし、このまま退散すればオールオッケーなはずだけど……。
女の子の異変に気づいたらしい西野が、その顔をのぞき込んだ。
どうかした?って聞いたみたい。
女の子は首を横に振る。
私は今度こそ退いた。
後ろに、二歩、三歩……。
そしたらなんと、下がりすぎたらしく、後ろのガラス窓に背中が衝突してしまった。
ガシャン。
我ながらアホすぎる。
即座にその場にしゃがみこんだけど、視界が壁に遮られる直前に、西野がこっちを見たのがわかった。
しゃがんだ姿勢のまま壁をつたって横に移動する作戦だったけど、これは非常にマズい。
冷や汗を垂らしながら膝を抱えこんで丸くなっていると、ついに。
「……利奈?」
真上の窓がガラッと開いて、静かな声が落ちてきた。
恐る恐る顔をあげる。