無気力オオカミくんは、私だけに夢中。
「ごめんなさい……。のぞきに来たわけでも邪魔しに来たわけでもなくてですね……」
必死に弁解。
そして、あとは用件だけ手短に伝えて、立ち去ろう。
「先生に、西野を呼んでこいって言われて……職員室で待ってるらしい。……以上です」
「ふうん。それにしても、よくここに居るってわかったね」
「だってこの前、西野がお気に入りって言ってたから」
「そっか。覚えてたんだ」
てっきり覗いてたことを怒るかと思ったのに、西野はニコって笑う。
自然な笑顔に、心臓をゆるく握られたような感覚になった。
「悪いけど、自分の教室帰ってくんない?」
「あっはい。それはもう、今すぐに……」
「いや。利奈じゃなくて」
「……え?」
西野の視線が向いた先は女の子。
「ごめん。今日はなんか気分乗らなかった。また今度ね」
そう告げて、あっさりと女の子に背を向ける。
その子は戸惑った表情で西野を見て、私を見て立ち去っていった。
私は悪くないけど、胸の中にもやっとした罪悪感が残る。