無気力オオカミくんは、私だけに夢中。


「早めに職員室に行ってね。……じゃあ、そういうことだから」


屈んだ姿勢を直して立ち去ろうとすると、制服のすそを引っ張られた。



「俺、なんで呼び出されたの?」

「知らないけど……お説教じゃない?」

「えー。なんか悪いことしたっけなー」

「しまくりでしょ。授業さぼるし、髪明るいし、制服着崩しすぎだし。……それに今だって女の子と……」



ふしだらなことしてたんでしょ……と言いかけてやめた。
ゴホン、と咳払いをする。



「女の子と……なに?」

「や、なんでもない……」

「利奈、いつから見てたの?」

「見てないよ」

「見てたから隠れたんでしょ」

「……ちょっとしか見てない……」



本当だよ。
西野の背中を見た瞬間、察して目を逸らしたもん。



「俺が気づかなかったら、ずっと覗いてるつもりだった?」

「っ、そんなわけないし!私、ほんとに見てないからね……。邪魔したらダメだ思って教室に戻ろうとした途端、あの女の子に見つかっちゃったんだってば」



ふーんと、西野は興味なさげに相づちを打つ。

< 58 / 332 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop