無気力オオカミくんは、私だけに夢中。
西野くんの胸元、ゆるっゆるのネクタイあたりを、ドンッと突き飛ばした。
「……ってぇ」
顔をしかめた西野くん。
けっこう強い力をこめたつもりだったけど、体はビクともしなかった。
「菊本、凶暴すぎでしょ……」
「……だって西野くんが軽すぎるから」
「見た目によらずガード固いんだねー。バカそうな顔してるし、絶対チョロいと思ってたのに」
「な……っ。バカって……」
それ普通に悪口だし。
イケメンだからって、なに言っても許されると思わないでほしいよ。
「本当のことでしょ?だって数学、いっつも補修受けてんじゃん」
「どうしてそれを……」
「空き教室で補修すんの、ホントやめてほしー。俺のお気に入りの居場所なのに」
「……」
いや、お気に入りの居場所とか知らないし。
学校はみんなのものだし。
ていうか放課後の空き教室で、いったい何やってるんだか……。
呆れた顔を向けると、西野くんは小さく笑って、ゆっくりと立ちあがった。