無気力オオカミくんは、私だけに夢中。
また心臓をつかまれた感覚になる。
目を細めて余裕たっぷりって顔で、絶対からかわれてるってわかるのに、胸の鼓動をコントロールできない。
ドンドン、ドンドン、うるさくビートを刻み続ける。
「西野ちゃらいし、やだ……」
せめてもの抵抗。
動じてないフリをする。
「ネクタイゆるっゆるだしシャツのボタン開いてるし。ほんと、女の子と何してたのって感じ」
嫌味を言ったつもりだった。
効果があるとは、最初から思ってないけど、とにかく私は西野のこと、みじんも意識してないってわからせたくて。
「こんなだらしない締め方してるんだったら、外してたほうがマシ!」
西野のネクタイをぐーっと引っ張った。
そしたら片方だけ伸びてしまって。
ネクタイの仕組み、わかってないから、西野の首が締まってしまったことに気づくのが遅れた。
「……利奈ちゃん、くるしいんだけど」
「っは、……えっ? ごめんなさい……」
「ほんと気性荒いよね。闘牛かよって」
「と、闘牛……!?」
私は牛なの?
びっくりして見上げたら、なぜか笑われた。
「さっきの言葉、ちょっと間違った」
「さっきの言葉?」
「充電する?じゃなくて……やっぱ俺が充電させて」
直後、ふわっと甘い匂いに包まれた。
激しく動いてた心臓が止まりかける。
状況を理解するのに、しばらくかかった。