無気力オオカミくんは、私だけに夢中。
「利奈って、ほんと男慣れしてないね」
「西野は遊び慣れてるね……」
「利奈も俺に慣れてよ」
「え……」
西野はいったん手を放して、私が引っぱったネクタイを直し始めた。
丁寧な手つきで、今度はちゃんと、首元をきゅって締める。
「ど?優等生っぽい?」
「いや、髪色がアウト」
「手厳しいね、利奈は」
ネクタイを締める仕草が色っぽくて頭がまたクラクラした。
「好きなタイプ、黒髪って言ってたっけ。真面目なのがいいの?」
「……少なくとも、西野みたいに遊んでる人はやだ」
「そんなこと言って。俺相手に、顔真っ赤にしてくるくせに」
「……っ!」
一歩退いたら、ぱしっと腕をつかまれた。
「やっぱり、利奈見てると悪いこと教えたくなる。その生意気な態度、いつまで保つかな」
頭の中で警報が鳴ってる。
何回目かわからない。
西野に本気になったら危ないってわかってるのに、西野の手を振り払えないこと。
「男のこと知らないなら、俺が教えてあげる。ぜんぶ」
そんな言葉と同時、目の前がフッと暗くなった──────。