無気力オオカミくんは、私だけに夢中。
西野がキスなんかするからじゃん。
睨んでみた。
自分の煩悩を打ち消すための、ささやかな抵抗。
「なにその顔。フツーにそそるけど、いいの?」
効果は……ぜんぜんテキメンじゃなかった。
「もっかいしていい?」
「っ、よくない……」
「顔にはしてほしいって書いてあるけど」
「書いてないし!テキトーなこと言わないで!」
「そっか。でも、俺がしたいからする」
西野がそっと腕を引きよせた。
さっきからずっと、甘い香りの中にいる。抵抗を忘れさせる危険な香り。
ファーストキス、私にとっては特別なのに、西野にのってはそうじゃない、この温度差もやだ。
だめだ、この人に特別を求め始めたら。
絶対だめなのに……。