無気力オオカミくんは、私だけに夢中。
──────ちゅ、とわざとらしいリップ音を立てて唇が離れた。
触れたのは、ほんの一瞬。
試すような瞳で私を見てくる。
「抵抗しないの?」
「……」
「キスすると大人しくなんだね。喧嘩したときとか便利そう」
意地悪い笑顔が鼓動に拍車をかけて、もう、何に対してドキドキしてるのかわからなくなってきた。
「……急に黙るなよ。そんなに顔赤くされたら、もっとってねだってるようにしか見えないんだけど。違うなら早く否定して」
じゃないと……と、西野が言いかける。
最後まで聞かないうちに、私は西野のシャツのすそを引っ張っていた。
「違わない……」
予想外の返答だったのか、西野は目を丸くする。
同じくらい私もびっくりしていた。
自分の口から出てきたセリフに。
我にかえって、否定の言葉を探したけど間に合わなかった。
「……今のは利奈がわるい」
気づいたら唇が重なってて、同時に胸がきゅっと狭くなった。甘いキスに自然とまぶたが閉じていく。
今は魔法にかかってるだけ。
あとで思い出したら、きっと虚しくなる。
わかってるのに、静かに受け入れることしかできなかった。