無気力オオカミくんは、私だけに夢中。
「もう出てもいい頃かな。匿ってくれてアリガトー」
1ミリの感謝も伝わってこないお礼を受けとって、私もおもむろに腰をあげる。
視線の先にあった時計を見て、声をあげそうになった。
授業始まるまであと1分くらいしかない……!
焦る私とは反対に、西野くんはスマホをながめて呑気にしてる。
「なにゆったりしてるの?授業始まっちゃうよ」
「えー。次の授業なんだっけ?」
「うん?……えっと、数学」
よりによってね。
「あー、じゃあいいや。サボろ」
「はあ?」
「菊本も一緒にサボる?」
「いや何言ってるの……」
軽くにらんでみせると、西野くんは意地悪く笑った。
「そうだよねえ、補修組だもん。
まあ、せーぜー勉強頑張って?」
その声に、始業のチャイムが重なった。
ええっ。なにこれ最悪すぎない……?
教室まで、一目散、振り返らずに走った。