無気力オオカミくんは、私だけに夢中。


「鈴ちゃん、待たせてごめんね」

「ううん~ウチこそ急かしちゃってごめんね。髪型、おかしくないよね?リップもはみ出たりしてないよね~不安だなあ」



普段はおっとりしててマイペースな鈴ちゃんも、今日はなんだか落ち着きがない。

スマホの内カメで何回も前髪をチェックしてる。


鈴ちゃん。
好きな人のことを考えてるときが1番可愛い。
メイクも、いつもよりしっかりめ。



片や私、ぜんぜん化粧っ気がない。

ほんのりピンクがつくかつかないかの薬用リップなら塗ってるけど。



「私もメイクとかしたほうがいいかな……」

「利奈はそのままでも十分可愛いよ~。メイクなんか覚えちゃったら、陸人くん焦るだろうなあ」

「……うん、たしかに」



慣れないことすんなよって笑われそう。
陸人は長年一緒にいるからこそ、変化を見せるのはちょっと恥ずかしい。


でも素敵な恋に巡り合いたいし、ていうか早く西野よりドキドキする人見つけなきゃなんないし。

そのためには、あか抜けることも必要だよね。



「帰りに寄ってみようかな。化粧品売ってるとこ」



そう口にしたとき

向かいの廊下の角から、西野が姿を現した。

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