無気力オオカミくんは、私だけに夢中。

「こ、これでいいの?」

「……」

「……西野?」



なぜかだんまり西野遥日。
こちらを凝視したまま動作停止。


えっ、なに?

私もつられて固まってしまう。


西野がちゃんと繋いでって言うから、握り返したんだけど。
私、なんか間違ってる?




「ねえ、西野ってば」

「あーいや。ちょっとびっくりしたっていうか」

「びっくり?」

「手繋ぐのって、こんな感覚だったっけ……みたいな」



西野は目を逸らしながら、もう一度、 感触を確かめるようにぎゅっと握ってきた。




「俺、手繋ぐのとか初めてかも……」

「え。それは嘘だ」

「ほんとだってー」



ニコニコしながら、子どもみたいに手をブンブン振りはじめる西野。

平気でキスしといて手繋いだことないとか、そんなことありえないのに。


でも西野が笑うと、自然と顔がゆるんでしまう。



傍から見たら、付き合ってるように見えるのかな。

手をブンブン揺らしながらしゃいでるバカップル?



困ったことに

恋人ごっこ、悪くない。

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