無気力オオカミくんは、私だけに夢中。
と言いつつ、揉まれたわけじゃなくて、制服の上から一瞬当てられただけだけ。
知らない人からされたら痴漢で大炎上だけど、陸人は…なんていうか、もう慣れた。
小学生のころから同じようなことされてたし、今さら不快感もない。
日常的なスキンシップみたいなもの。幼なじみだから許される。陸人に下心が一切ないのがわかってるから。
でも、ここは外。
周りの人に見られるのが恥ずかしくて、その手をパシッと振りはらった
──────矢先。
私の視界の端に、ブラウンベージュの髪がちらりと写りこんだ。
同時に、ふわっとした甘い匂いが鼻孔をくすぐる。
「あ……西野」
思わず名前を口にすると、陸人と私を追い越した人物が、横目でこちらをふり返った。
ドキッ!とバカみたいに跳ねあがる心臓。
リップのこと気づいてくれるかな……なんて期待が芽生えるけど、西野はにこりともしない。