無気力オオカミくんは、私だけに夢中。
行ったところで何かできるわけでもないし、むしろ西野からしたら迷惑だろうし。
でも、頭の中をずっと西野が支配してる。
寒くないかな、吐き気とかしてないかな、脱水起こしたりしてないかな、ひとりで寂しくないかな……。
子どもじゃないんだし、
大丈夫なのはわかってるけど、でも……!
「し、失礼しまぁす……」
気づけば保健室の中に入ってた。
並んでる5つのベッド。
カーテンが閉まってるのは1つだけ。
抜き足、差し足、忍び足。
姿を見る前から心臓はバックバクで、もうほんとに口から飛び出てしまいそう。
泥棒でもこんなに緊張しないかも、なあんて。
だけど、ベッドまであと4メートルくらいになったとき。
「だーめ。ハルカ君はじっとしてていいから……ね?」
先のほうから聞こえてきた甘い声は、たぶん空耳じゃなくて。
「大丈夫だよ、風邪あたしに移しても」
マンガみたいなセリフだなあ…なんて、赤面する暇もなくて。
私はただ、その場に貼りついたみたいに固まった。