無気力オオカミくんは、私だけに夢中。
……先客がいらっしゃった。
ムカムカと湧き上がってくる怒り、すうっと引いていく気持ち、なぜかじわっと熱くなる目元。
相手は西野遥日。
こんなのは、たぶん日常茶飯事で、冷静に考えてみれば驚くほどのことじゃない。
悲しくなるのは、私が勝手に夢見てたから。
もしかしたら寒いかもしれないし吐き気もあるかもしれないし脱水だって起こりかねない……けど、西野は絶対にひとりじゃない。
寂しいかも、とか一瞬でも考えてバカみたいだった。
西野を気にかけてる人なんてごまんといるのに。
「ハルカ君の肌、やっぱりちょっと熱いね……」
やだ、触んないで……って思っちゃう私。
これ以上聞きたくなくて、踵を返そうとしたら
その直後。
「……待って」
「え?」
「……たぶんそこ、誰かいる」
ビクッと肩があがった。
もしかしなくても私のこと。
気配消してたつもりだったけど、だめだったみたい。