無気力オオカミくんは、私だけに夢中。
逃げ出す暇なんてなかった。
一歩後ずさったけど、遅かった。
シャッ…とカーテンが容赦なく開いて、相手の女の子とバッチリ目が合う。
その隣に、上半身を起こした西野も映った。
だけど、西野には焦点を合わせないようにする。
どんな表情をしてるのか知るのが怖かったから。
「……え、誰?」
上履きの色、3年生。
よりによって先輩だなんて。
胸元がはだけてて、思わず両手で顔を覆った。
「す、すみません。ごめんなさいい……」
反射的に出てきたのは謝罪のセリフ。
頭が真っ白で、言い訳もなにも思いつかなかった。
「お邪魔してすみません、ほんとに。私は今すぐ出ていくので……」
「利奈」
低くて、ちょっとかすれた声が遮った。
指の隙間から西野を見る。
……無表情。怒ってるようにも見える。
いや、絶対怒ってる。
「なに、ハルカ君。こんな子どもっぽい子にも手出してるの?」