罪作りな彼は求愛方法を間違えている
彼にそらくんとは雄猫のことだと説明しようとしたのだが、不機嫌さを隠しもしない男の真意を知りたくなった。
飲み友達として心配してくれているのか?
ただ単に、男に引っかかった哀れな女として心配してくれているのか?
それとも、1人の女として心配してくれているのか?
男と女の駆け引きなんてした事もないのに、その勘違いを利用して、高橋さんの心を探ろうと思ってしまった。
「そんな男でお前は幸せになれると思っているのか?」
「高橋さんに関係ないでしょう。待っていてくれるだけで仕事も今以上に頑張れるし、一緒にいてくれるだけで癒されるし、今、幸せなの。だから、悪く言わないで」
恋愛対象として見てもらえてない事を先ほど痛感させられたばかりだというのに、私はこの時きっと魔が差していた。
「…悪かった」
高橋さんは、何か言いたげな言葉を私の勢いにグッと言葉を詰まらせた後小さな声で謝まり、ドサっと椅子に座り背を向けた。
彼に謝らせたかった訳じゃない…
ただ、真意を探りたかっただけだったのに、うまくいかない。
した事もない恋愛の駆け引きの難しさに、自己嫌悪に落ちた私は、これ以上何を言えばわからなく、今度は逃げるように『帰る』と言い店を出た。