罪作りな彼は求愛方法を間違えている
鼻先を鍋に近づけて、可愛らしい舌で湯気を食べようとする姿に、私の苛立ちも少し落ち着いていく。
「そらくん、美味しい?」
味なんてしないとわかっていても、聞いてしまうのは、今は誰かと会話したかったからかもしれない。
食べれないとわかった彼は、私の膝の上で座り直しおこぼれが落ちて来ないか待っているのだが、モヤモヤをまだ抱えていた私には正常な判断ができてなく、そらくんの行動が懐いてくれたものだと都合よく勘違いする。
「落ち込んでいると思って側にいてくれるの?そらくんは優しいね…」
ついグスッと、鼻をすする。
そらくんは、おこぼれが落ちてこないとわかると、ソファの上に上り、お気に入りのクッションの上に丸まって毛づくろいをしだした。
それでも、誰かに聞いてほしい私は、答えてくれない相手に向かって話しを続ける。
「今日ね、好きな人とちょっと言い合いしたんだ。彼、スキンシップが多いし、私といる時は他の女性に見向きもしないで側にいるんだよ。意地悪言うくせに特別扱いみたいに優しくしてくれたりされたら、誰だってその人のこと好きになっちゃうよね⁈」
そらくんは、聞いてられないと大きな欠伸をして寝る体勢に入ってしまった。