罪作りな彼は求愛方法を間違えている

通い出して数ヶ月経った頃、いつも目を惹くイケメンがいる事に気がつく。

お互いカウンターの左右の隅を定位置にし、視線を合わせる事もなく個々に静かに呑んでいたが、コウ兄と仲良く会話している内容が時たま聞こえ、『へー、コウ兄の友達なんだ』と彼を認識した。そのうち何度か視線が合う事があり、次第に顔見知り程度に会釈するようになった。それでも、二人の距離は変わらないままカウンターの左右の隅を定位置にしてお互い呑んでいた。

ある日、いつものように一人で呑んでいたら、酒癖の悪い男性に絡まれ、見かねたコウ兄がやんわりとその場を収めようとしても、酔った男の手は馴れ馴れしく、口から出てくるセリフもゲスなセリフばかりで、こちらの堪忍袋も切れかけた時、その場にいなかった高橋 斗真が遅れて来た彼氏のふりをして私を助けてくれた事をキッカケに、ただ会釈する関係から一変して、今では顔を合わせれば当たり前のように席を隣り合わせに座り一緒に呑む間柄になった。

「高橋さんが相変わらずモテて視線が痛いんですけど、前のようにあっちの席に戻ったらどうですか?」

彼の隣に座るなり、店内にいる彼目当ての女性客からの突き刺さる視線に苦笑せずにいられない。
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