罪作りな彼は求愛方法を間違えている
余りの突然の出来事に、私はただボー然と玄関ドアを見ていた。
一体、何が起こったのだろうか?
唇に指を這わせて確かめてみるが答えは1つだ。
キスされた…
「高橋さん、どうして?」
もう、帰ってしまった人に聞いても仕方ないのに、やっと思考が動き出したのだから仕方ない。
な、なんで?
えっ、訳わかんないんだけど…
動揺しながらも、嬉しくてキスされた唇から手は離せないでいる。
夢でも、妄想でもなく、唇には高橋さんの唇が触れた感触が生々しく残っているのだ。
ただ触れただけのキスに思わず息を止めてしまった数秒の間、彼と私は見つめ合っていた。そして、唇が離れた瞬間、ためていた息を吐き空気を求め息を大きく吸い込んだ私を見た高橋さんは、ご機嫌な様子で頭を撫でた後、床から立ち上がっていた。
その様子を眺めながら、私のお尻は床に落ちていた。突然の事に腰を抜かしたと言ってもいいぐらい力が入らなかった気がする。
ボー然とする私に苦笑した高橋さんは、ソファの上に移動していたそらくんに近寄って行くが、お腹が膨れたそらくんは寝る体勢に入っていて見向きもしない。
先程との態度の違いに高橋さんは文句を言いだしていた。